来日公演 先行インタビューレオ・ジアノラ  音楽を語る
中編「Jazz・即興へのアプローチ」




西垣林太郎(以下R)「異なるジャンルの様々なグループに参加していますが、ロックやジャズ、クラシックのミュージシャンの間で何か違いを感じますか?」

 

レオ・ジアノラ(以下L)音楽は普遍的な表現方法です。それぞれの音楽家は自分の感覚に最も合った表現方法を見つけているので、違いと言えばアプローチ方法に存在するでしょう。演奏する曲の構造やダイナミクス、リズムによってアプローチは変わるでしょうし、演奏者の即興の能力にも寄ると思います。しかし最終的に大事なことは、ミュージシャンたちが各々の表現、音楽的経験などを通じて、聴衆や共演者と何か共有出来るものを積極的に探そうとすることです。このことが、一般的に音楽やアートを生き生きとしたものにするのに最も大事なことのように感じます。

 

 

「今回のプログラムの様にジャズなどのスタンダード曲をギターソロで演奏するのは珍しいアプローチだと思うのですが、どういったことを事前に決めておき、どういったことをその場で即興しているのですか。」

 

「まず選曲についてですが、メインのメロディー、つまりテーマが好きな曲を選びます。即興のアイデアを引き出してくれるテーマであることが大事で、ちょっとした変奏から始め、ときには大きく異なるアイデアも取り入れますが、基本となるハーモニー構造はキープします。」

 

「なるほど、題材も大事で、題材が決まれば大枠を守りながらということなのですね。

 

即興をこれから挑戦しようとする人はどういったことから始めればよいですか?」

 

まずジャズにおいては基本的な語法を知ることが大事です。そして、それほど難しくないスタンダードのテーマを正しく学びます。例えばAll of meやFourなどが良いでしょう。特にビバップにおいてそうなのですが、テーマ自体がコード譜にもとづいた即興のことがあり、Billie's bounceのように即興的なフレーズ自体がスタンダードになったものがあります。ですのでテーマをコード進行を分析しながら、特にフレーズのリズムの付け方に注意しながら演奏することが大切です。テーマのリズム中にこそスウィングは存在すると思います。ジャズの語法に親しむ最も良い方法は、II-V-Iつまりハ長調ならDm7 G7 Cmaj7のようなジャズで最も大事なコード進行に沿って、スウィングのリズムを感じながら短いフレーズを演奏してみることです。そして、基本のコード進行同士を活き活きとつなげていき、最終的には曲全体に拡げます。そしてもちろんのことですが、ジャズの巨匠の演奏を彼らの方法を分析しながら、特にスタンダードの基本的なコード進行の即興に注意しながら聴いてみることも大事です。ただ最初のうちはビバップ以前のものがやさしいと思います。